間宮中尉の返事、良いニュースは小さな声で語られる

ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)



  うまく説明できひんのやけど、
  聴いてくれますか?


  ずっと前、
  太陽公園が見える家に住んでいたころ
  『ねじまき鳥クロニクル』を読み始めました。
  すごく面白かった。
  惹きこまれました。
  だけど、それなのに、
  私は、途中で読むのをやめました。
  なぜだろう。
  長い間そのままだった。
  物語は止まったまま
  そこにありました。
  猫は行方不明。



  「『ねじまき鳥』読んだ?」って訊かれて
  「途中まで」って
  私は言ったよね?



  長い長い時間が経って
  太陽公園はもう見えない。
  私は、再び『ねじまき鳥クロニクル』を手に取る。  
  そして、読み終えました。



  「しかしもし岡田様の中に、奥様のお帰りをもうしばらく待ってもいいというお気持ちが
   少しでもおありになるのでしたら、そこで今のようにじっと待っておられるのが、
   おそらくは正しいことであろうかと思います。」



  第2部の最後の章が一番好きだ。
  プールの場面がすごくいい。
  言葉は、私に語りかける。
  そして、理解する。
  なぜ、今まで物語が止まったままだったのか。
  あのときじゃなくて
  なぜ今なのか。



  今度
  「『ねじまき鳥』読んだ?」って訊いてくれたら
  「読んだよ」って
  私は答える。